10月7日午後5時から霞ヶ関の弁護士会館2階において行なわれた東京三弁護士会倒産法部共催の『裁判外事業再生手手続』に関するシンポジウムに聴講に行きました。
裁判外事業再生手続について少し説明しますと,いわゆる法的再生手続として民事再生と会社更生というのがありますが,このような法的手続きを経ないで事業を再生する方法で,私的整理ガイドラインによる再生,中小企業再生支援協議会による再生,特定認証ADRによる再生及び特定調停を指します。
ただし,事業再生に関する特定認証ADRとして設立された事業再生実務家協会の認証にはもう1か月程度時間がかかりそうな状況のようです。
さて,シンポジウムの内容ですが,須藤英章弁護士による「私的整理に関するガイドラインおよび事業再生ADR」についての講演に始まり,加藤寛史弁護士による「中小企業再生支援協議会の概要」についての講演,多比羅誠弁護士による「特定調停と裁判外事業再生手続から法的手続への移行」についての講演,山本和彦一橋大教授による「裁判外事業再生手続の意義と課題」についての講演が行なわれました。その後,上記講演者4名に東京地方裁判所民事第8部部総括判事である難波孝一裁判官を加えて,裁判外事業再生に関するパネルディスカッションが行なわれました。
それぞれの裁判外事業再生手続の説明とともに,今まであまり裁判外事業再生手続が利用されてこなかった理由を突き止め,それを克服して利用しやすい制度にし,裁判外事業再生手続の利用を増やしていこうという内容でした。また,裁判外事業再生がうまくいかなかった場合でも,円滑に法的手続に移行できるようにする仕組み作りをしっかりしていくべきではないかということについても話し合われました。
たしかに,裁判外事業再生であれば,報道される可能性も少なく,金融債権者だけを対象とするなど,事業価値を毀損しない形での再生が可能な点で非常にメリットがあるだろうと思います(ただし,山本教授は法的手続でも本当に事業価値を毀損するといえるかどうかについては実証されていないとの御意見でしたが,個人的にはやはり報報道で民事再生とか会社更生と聞くと,取引先にも大きな動揺を与えると思いますので,少なからず事業価値への影響はあるのだろうと思います。)。そして,法的手続の申立ては多くの契約書では解除事由や期限の利益喪失事由に該当しますが,裁判外事業再生であればそういった問題も表面化せずに短期間で再建手続きを進めることが可能という意味で非常によい制度だと思います。
ただ,対象債権者全員の同意が必要であったり,厳しい数値基準があるなど乗り越えなければならない壁も大きいといえます。また,裁判外事業再生はどちらかというとまだ余裕があるけど早晩行き詰まることが予想できるような段階の企業に向いている手続ともいえると思います。
シンポジウムは非常に盛況で,予定では午後5時から8時までだったのですが,終わったのは午後8時45分ころでした。
今後は事業を再建するにあたっては様々な選択肢があることを念頭に置いて,それぞれの長所短所をふまえながら弁護士もアドバイスをしていく必要性があることを学びました(鈴木俊)。