今日は,支払督促についての話です。
支払督促とは,正式の裁判を経ないで,判決と同じように金銭の支払を命ずる処分を得るために認められる制度で,債権回収によく利用されます。
メリットとしては,債権額に制限はないこと,証拠調べもなく迅速な判断がなされること,必要な収入印紙代は訴え提起の場合の半額であること等があります。
ただ,いいことばかりではなく,督促異議申立期間内に相手方から異議を申し立てられると,通常の訴訟に移行しますので,結局裁判をやることになります。
また,支払督促の場合,管轄に制限があります。基本的に,債務者の住所地や本店所在地にしか申立てができないのです(訴訟ではもっと広い管轄が認められています。)。この管轄の問題は,訴訟に移行した場合,その管轄の裁判所で訴訟追行をすることになるので,債務者の住所地が遠いときには申立者にとって大きな負担となります。
先日,法人格のない事務所に対して支払督促を申し立てるという事件がありました。法人格のない事務所なので,それ自体を債務者とすることはできず,「その事務所こと事務所の代表者個人」という形にせざるを得なくなったところ,裁判所書記官からその場合には代表者個人の住所地を記載してくださいと言われました。代表者個人の住所地は分からないと言うと,書記官からは弁護士なので調べることは可能でしょうと言われました。
住所を調べるのは納得がいかないので,法律を調べたところ,民事訴訟法383条1項2号がそのような場合を手当てしており,一定の要件を充たす場合には債務者が有する事務所の住所を管轄とすることができるとされていたので,それに基づき申立てをすることにしました。その際,書記官の方からは,きちんと管轄について分かるように記載して下さいとのことでした。
法律というのはそれなりによく考えられているなぁと感心した一件でした。
[弁護士 鈴木 俊]